梓は奏を捕まえようとして走り出したが、蓮はすかさず梓の肩を引き止めた。
梓はカッとするあまり、蓮の方へと振り返って鬼の形相を向ける。



「何で私を引き止めるのよ。引き止める相手が違うでしょ!」

「まぁまぁ…。あいつは、あぁ見えても案外口が固い奴だから、簡単に口を割らねーって。」

「でもっ…。」


「大丈夫、大丈夫。そこまで悪いヤツじゃねーよ。お前もわかってるだろ。」



私は蓮の言葉を信じて去って行く奏を引き止めるのをやめた。



そうだよね。
私達は2年の付き合いで信用もあるし、先生との交際を人に軽々と話す訳ないか。
もし、教師と生徒が交際してるって噂が流れたら、学校中の問題になっちゃうしね。

蓮の言う通り、奏の事を友達として信じてあげないとね。






ーーところが、翌日。



「お前さぁ、高梨と付き合ってんだって?昨日、奏から聞いてビックリしたよ。俺、聞いた瞬間ツボって笑いが止まらなかったわぁ。」

「………。」



大和は梓をバカにしながら、目の前で腹を抱えながら笑い転げている。



奏…。
あんたがあの時付箋を拾い上げなければ。
いや、空気を読んで黙っててくれれば、大和が事実を知る事はなかったんだよ。



蓮…。
あんた、昨日奏は口が固いから大丈夫って言っていたよね。
あんなに自信満々で言うから、私はあんたの言葉を信じて止めなかったんだよ。

だけど、あっさり大和にバレてるってどーゆー事?