「何それ?」



7メートルほど先で梓と奏の姿を見かけた蓮は、奏が高々と持つ付箋が気になったのでゆっくりと接近し、背後からヒョイと付箋を取り上げた。

付箋を両手で開き、なぞるように目を通す。



「なーんだ。高梨からのメモじゃん。」



蓮は不機嫌になると、付箋をグシャッと握り潰して後方の床へポイッと投げ捨てた。


予想だにしない展開に見舞われた梓は、まるでビーチフラッグをしているかのように丸く潰された付箋を床から拾い上げると、すぐさまポケットにしまった。


一方の奏の頭の中のパズルは、差出人不明から高梨の名へと当てはめる。



「マジ?お前、高梨と付き合ってんの?」

「蓮っっ!」

「〜♪」



蓮は何食わぬ顔で口笛を吹いた。
もう、この時点で悪意しか感じられない。



「お前さぁ、趣味悪ィ~。そうだ!早速大和に報告しよーっと。」

「奏っっ!」



上機嫌な奏は、軽やかなステップを踏みながらその場から離れていった。



蓮のヤキモチ加減にも限界がある。
奏に先生との秘密をバラすなんて…。