「俺、こんなに人を好きになったのはお前が初めてだよ。」



そうやって耳元で囁く彼は、学校一のアイドル的人気を持つ超イケメンだけど…。

中身は至って普通の男子高生。



恋だってする。
ヤキモチも妬く。
意地悪だってする。
時には、子供みたいに困らせてくる。

見惚れるほど容姿端麗だけど、別に特別な人間じゃない。



だけど、私からするとスーパーマン。
私がどんな嫌がらせに遭っても、我が身を顧みずに精一杯守ってくれる。
泣いてる時は優しく抱きしめてくれた。
いつも味方でいてくれた。


二人の間に浮気という障害はあったけど、彼と離れてからようやく存在の大きさに気付かされた。



どんなに周り道をしても、私にはやっぱり彼しかいない。
気持ちが彷徨ってしまっても、最終的に辿り着く場所。


蓮は私の心を支配する王様だ。






黒板に背中を向けた蓮と梓は、後夜祭の借り物競走の時の事を振り返った。

ステージ上で蓮が梓に突然告白をして会場はちょっとした騒ぎになり、モノではなくて人間を連れて来た事によって失格になってしまった。



「もしあの時、借り物のルールが緩くて人間もOKだったら、私達は優勝出来たかな?」

「いや、俺らは確実に負けてたな。」


「…え、何で?」

「だって、お前は借り物じゃなくて元々俺のモノだから。」



そう言って、蓮は左親指の腹を私の頬に触れた。
一つに重なったばかりの人影を映し出している黒板に書き残した、私の最後のメッセージ。



《蓮の全部が大大大好き♡》



そして、私のメッセージのすぐ下には、蓮が先ほどまで書いていたメッセージ。



《お前の心は俺のモノ 俺の心はお前のモノ》



蓮は結構計算高くてズル賢い。