「…もう、バカなんだから。」

「ごめんな…。」



梓は軽く上半身を離すと、蓮の胸を拳でトントンと交互に叩いた。



「クリスマスの日、蓮に傷付ける事を言っちゃったのは悪かったけど、何で無視をしたのよ…。あの時は本当に辛かった。」

「奏が押してダメなら引いてみろって、アドバイスをくれたから。」


「毎日私から離れなかったクセに、いきなり引かれちゃったから、どうしたらいいか分からなくなっちゃったよ。」

「…だけど、お前は戻って来てくれただろ。」


「悔しいけど、本当だね。」



蓮は学校一のモテ男。

一歩街を歩けば、女子の視線をひとり占め。
電車に乗れば、注目の的。
黄色い声は彼にとってのBGM。
バレンタインの日は、下駄箱の扉を開けると雪崩のようにチョコのプレゼントが降ってくる。
ファンが多いお陰で、彼女の私はいつも妬まれ役に。



だけど、蓋を開ければビックリするほど恋愛下手。
だから、いつも恋多き男の奏に恋愛相談をしていた。


蓮は人のアドバイスをバカ正直に聞いちゃうくらい不器用な人。