「蓮がどう思ってるかわからないけど…。私は…、蓮を諦められない。もう二度とお別れなんてしたくない。またやり直したいよ。」



梓は涙をポロポロと顎に滴らせながら、スカートをギュッと握り締めた。
口から飛び出た言葉は、幾度となく繰り返していた復縁を願う言葉。



もうこのセリフを言うのは何度目だろう…。
蓮も聞き飽きたに違いない。
でも、感情がピークに達しているから、今はこれ以上の言葉が出て来なかった。



蓮は窓際から離れて黒板前の梓の目の前に立ち、ワイシャツの袖で片方ずつ梓の頬に滴る涙を拭う。



彼のワイシャツの袖口からは、いつもと変わらない香りが漂う。
既に我慢の限界を迎えているせいか、その香りは更に涙を誘った。



「……ありがと。やり直したい気持ちは嬉しいけど、お前から聞きたいのはそのセリフじゃないんだ。」

「蓮………。」



もう…、ダメなのかな。
きっと蓮は、私からサヨナラという言葉を待ってるんだよね。

私達、今日で本当に終わりなのかな。
蓮とはお別れしなくちゃいけないのかな。

嫌だよ……。
離れたくないよ。



梓は不安と恐怖に駆られるあまり、肩を震わせながらヒクヒクと啜り泣き始めた。