蓮はチョークの粉をぱっぱと払ってから黒板を離れて窓へ向かい、窓枠に両手をかけて向こうの景色の校庭に別れを惜しむかのような瞳で眺めた。



「今日で高校生活も最後だね。振り返ってみると、俺の三年間は教室とお前がセットだったよ。」

「あはは、私も同じ事を思ってた。」


「三年生だけでも7クラスあるのに、まさかお前と三年間同じクラスだったなんてすげぇ確率。……それが、今日で最後と思うと寂しいよ。」

「………えっ。」



一瞬、目の前が真っ暗になった。
《最後》と言う言葉が耳に入ったら、急に息苦しくなった。



「今までありがとう。俺はお前が傍にいてくれたお陰で楽しい三年間を過ごせたよ。」



私は今この瞬間に蓮とやり直す気でいたのに、今までありがとうって……。



「いい時も悪い時も…。俺らはいつも思い出を共有し合ってたよな。」



高校生活最後の日に、締めくくりの言葉なんて言わないでよ。



「俺、二年間お前と付き合えて本当に幸せだった。感謝してるよ。」



やめて……。
もし今から別れ話を始めるなら聞きたくない。
私達の関係を勝手に最後にしないでよ。


蓮が私の高校生活の青春全てなんだよ。
もう二度と離れたくないって思ってるのに。