高梨先生は、嫌がらせを受けている事を相談せずにやり過ごそうとしている私にこう言った。
『黙っているだけじゃ思いが伝わらない。口にしたら気持ちが楽になる事もある。相手に伝えなきゃいけない話を怠わったり、気を遣い過ぎて一人で塞ぎ込んだり。…そこが梓の悪い所だよ。』
奏と大和は、嫌がらせの事実を知って誰にも相談しない私に痺れを切らしてこう告げた。
奏『お前は辛いとか、悲しいとか…。自分の気持ちを伝えていかないから、俺らはお前の気持ちに気付かないんだよ。自分の気持ちを言わないのはお前の悪いところ。』
大和『辛い気持ちを心に仕舞い込んでたら、いつまで経っても伝わらないよ。ちゃんと自分の口から言わなきゃダメだろ。』
それだけじゃない。
思い返せば、蓮はいつも私の気持ちを知りたがっていた。
『お前は………、どうだったの?付き合ってた時、………俺のどんな所が好きだったの?』
『何でそんなに俺とやり直したいの?』
『…お前の悪いところ、まだ見つからないの?』
蓮はいつも私からのボールを受け止める準備をしていたのに、私は…。
『私は蓮の事なんてこれっぽっちも思ってないんだから…。』
残念ながら傷つける言葉しか言ってない。
ケンカしては仲直りの繰り返しで平行線な関係に行き詰まりを感じていたけど、それは自分自身に原因がある事にようやく気付いた。
度重なる試練が待ち受けていても、心に平和をもたらせてくれたのは、いつも蓮だったのに。
蓮…。
ごめんね。
私は蓮の心の叫びに気付いてあげる事が出来なかった。
高校生活最終日の今になっちゃったけど、私の悪い所がようやく見つかったよ。
長らく待たせてごめんね。