「この前、梓が私達に『自分の悪い所』を質問してきたよね。」

「あ…うん。」


「私と蓮くんの視点は違うかもしれないけど、私の視点がヒントになる可能性もあるから言わせてもらうね。」

「うん、お願い……。」



梓は少し緊張気味にゴクリと息を飲んだ。



「梓の悪い所は、自分の気持ちを伝えない事だよ。」

「え…。」


「この三年間、助け舟があったにも拘わらず、梓は誰にも救いの手を求めなかった。大和くん、奏くん、高梨先生、蓮くん、……そして私に迷惑かけるのが嫌で、度重なる苦難も心の中で解決してた。……だから、苦しかったんじゃないかな。」

「……。」


「人に頼っていいんだよ。梓が自分の殻に閉じこもったままだと、私達は解決してあげられないんだよ。」

「みんなに…迷惑かけたくなかったの。何度もしつこく嫌がらせが続いたから、せめて自分以外の人には嫌な思い出を作らせたくなかった。……頼らなくてごめんね。」


「伝える事は迷惑な事じゃない。涙を流して自己解決するより、手を重ね合わせて協力する方が何十倍も強くなれるんだよ。……それは、今日まで身をもって実感したはずだよ。みんなが梓を見守ってくれてたからね。」



梓は紬の想いを受け取ると自然と涙が浮かび上がった。
紬はブレザーのポケットからハンカチを出して梓の涙をそっと拭く。





三年間親友でいてくれた紬は、何もかもお見通しだった。



嬉しい時も…
楽しい時も…
悲しい時も…
辛い時も…
苦しい時も…



紬から指摘されて振り返ってみたら、以前高梨先生にも奏にも言われていた。

私はみんなからの大事なアドバイスを知らぬうちに見過ごしていた。