ーー朝、いつもより早く目が覚めた。

スマホのアラームを先に消して、洗面所へ顔を洗いに行く。



今日は卒業式。
高校の制服を着るのは今日で最後。
この先、もう二度と着る事はない。


紺色のブレザーにエンジ色のリボン。
グリーンベースのチェックのスカートに、紺色のハイソックス。

当たり前のように毎日着ていたこの制服も、今日でお別れかと思うと寂しい。





乗り慣れた電車に足を運び、卒業式に参列する母と一緒に最後の登校。
体育館へ足を運ぶ母と別れて教室へ向かう。


教室に一歩足を踏み入れると、室内の雰囲気はどんよりと重苦しくて、クラスメイトは何処となく口数が減っていた。



いつもは何も置いていない教卓に、今日は花が添えられている。
花の存在が、特別な日だと感じさせている。


毎日見慣れていた教室。
卒業したらもう二度とくることがないと思うと、寂しくて涙が浮かんできた。



黒板の中央には《卒業おめでとう!》と白いチョークでデカデカと書かれていて、その周りを囲むかのようにピンクとイエローのチョークで装飾されている。

その文字の周りには、チョークを持った生徒達が次々とお別れのメッセージを書き込んでいた。



「おはよ、梓。いよいよ卒業式だね…。」



紬がニコリと微笑みながら梓の横から挨拶する。



「おはよ。ねぇ、私達もみんなと同じく黒板に何かメッセージを書かない?」

「うん、そうしよう!」



梓は鞄を机の上に置くと、紬と二人で黒板にメッセージを書いている生徒の後ろに並んだ。
書き終えた生徒からチョークを受け取ると、教卓のすぐ後ろ側に小さなスペースが空いていたので、私はそこにメッセージを書き残した。