俺と付き合う女は、必然的にいじめの対象者になってしまう。
大概の女は、度重なる嫌がらせに痺れを切らして俺の元を去って行くパターンだった。



『すっ…好きなんです…。柊くんが。』

『プッ…。俺のどこが好きなの?』


『顔。…顔以外よく分からない。』

『えっ…。顔?菊池は俺の顔が好きなの?それだけで告ってるの?』


『…だって、顔も柊くんの一部でしょ。』



入学早々、変な告白をしてきたあいつ。
思い返すだけで笑える。

あいつを彼女として受け入れたのは、やけにバカ正直で信じていけそうな気がしたから。



嫌がらせが辛いなら離れていけばいい。



最初は軽い気持ちで恋愛をスタートさせたけど…。

あいつは他の女とは比較にならないほど強い精神力の持ち主だった。
そんな内面の強いところも魅力的で…。


恋愛の醍醐味を教えてくれたのもあいつ。
体裁目的の関係よりも、一つのアイスクリームを奪い合いながらも仲良く二人で分け合うような関係に幸せを感じていた。





でも……。
俺は彼女と距離を置いているうちに大事な事を見過ごしてしまっていた。



『私は蓮じゃないから、蓮が言ってる通りの事なんて出来ない。私には私の事情があるの。自分勝手な見解を押し付けないでよ…。』



きっと心が泣いていたはず。
あいつは不器用だから、近道する事を知らない。

手を差し伸ばせばいつでも守ってやれるのに。
言いたい事は今まで沢山あったはずなのに…。

人の事を考え過ぎて、いつも自分ばかりを犠牲にしていて……。







あいつ……。
バッカじゃねーの。


何で自分の気持ちや想いを口に出さねーんだよ。
何で俺に黙って一人で我慢してるんだよ。

俺に心配かけたくないからって…。
最後の最後まで、一人で苦しみを背負い続ける気かよ。