「特に花音の嫌がらせは陰湿だった。一週間に何度も男子がいない隙を狙っては悪口を言ったり、偶然を装って目に見える危害を加えたり。……実は、花音達に逆らえる人なんて、クラスの誰一人としていないの。」

「……。」


「花音に逆らった時点で、自分がいじめの標的なっちゃうからみな口を噤んでる。梓もいま以上に嫌がらせがエスカレートしないようにずっと我慢してたんだよ。」

「…そうだったんだ。」


「蓮くん、本当にこのままでいい?蓮くんが見ていたものが全てじゃない。付き合っていた頃も、梓は蓮くんが見えないところで沢山泣いていたんだよ。」

「あいつ…が?」


「梓は蓮くん一筋だったから…、蓮くんが傍で守ってくれたから、度重なる嫌がらせにも耐えて強くいられたんだよ。」

「……。」


「それに、最近は卒業間近のせいか、嫌がらせレベルも右肩上がりだった。梓は受験期間中の蓮くんに余計な心配をかけたくないから、蓮くんには絶対言わないでって……。」



目を逸らしているうちに叩きつけられてしまった、彼女のいたたまれない現実。

それを教えてくれたのは、俺の代わりに梓を守り続けていてくれた紬ちゃんだった。