紬は少し寂しそうな目で微笑んだ。
「蓮くん…。明日でもう卒業だね。」
「早いな。三年間あっという間だったよ。」
「蓮くん、今回は花音の悪口の件で梓とケンカしちゃったんでしょ?」
「……。」
「仲直りしないの?…それとも、卒業を機にお別れなの?」
「……それは、まだわからない。」
彼女は時より寒そうにコートの袖口から覗かせる指先同士を擦ったり、口元に当てて温かい息を吐いたり。
紬ちゃんは、登校してから下校するまでしつこく梓を追いかけ回して復縁を迫っていた俺を、一番近くで応援してくれる存在だった。
そして、卒業式前日の今日も俺達の心配をしている。
「実はね、蓮くんが見ていない所でも梓に嫌がらせが繰り返されていたの。多分、蓮くんが把握してるのは全体の半分程度だと思う。」
「そんなに嫌がらせが酷かったの?」
蓮は仰天した目を紬に向けた。
すると、紬はコクンと頷く。
嫌がらせの実態は把握していたけど、自分は半分程度しか知らないとなると話は別に。