今朝紬ちゃんと会う約束をしていた俺は、ホームルーム後に用事を済ませてから、約束の場所の校舎前の花壇に向かった。



「…ごめん、かなり待たせちゃったよね。」

「ううん、全然平気。蓮くん忙しそうだね。」


「ハハッ…。明日で卒業式だからかもな。」

「みんな蓮くんとのお別れが寂しいんだよ。」



蓮は紬の隣に行き、花壇のレンガに腰をかける。



受験を終えてから久々に登校すると、同級生や下級生など呼び出しを受けてしまい、引っ張りだこで忙しかった。

約束したとはいえ、完全に放置状態にあった紬ちゃんは、恐らく40分くらいはこの場所で待っていたはず。



三寒四温のこの頃、春を迎えたとはいえまだ風は冷たく、長々と待ちぼうけを食らっていた紬ちゃんは少し寒そうに腕を寄せて肩をすくめていた。



途中、帰ってもおかしくないくらい長時間待たせてしまったのに……。
彼女は文句一つ言わずに俺を待ち構えていた。

信念を貫こうとしている凛とする姿勢に、これからどんな話し合いが行われるか大体の予想が出来た。