中庭のベンチに足を大に広げて待っている大和は、校舎から出て来る私に気付いてヒラヒラと手を縦に振った。



「おーい。梓、こっち〜。」

「ゴメンね、お待たせ。」


「おせぇー。雲ひとつない晴天を見てみろよ。待ちくたびれて干物になっちまいそうだった。」

「…あのさぁ、電話がかかってきてから五分も待たせてないんだけど。大和ったらいつも大袈裟なんだから…。」



学校で大和の冗談を聞くのも今日が最後。
そう思うと寂しい。



梓は大和の横に座ると、大和に身体を向けながら手紙が入っているブレザーの右ポケットに手を突っ込んだ。



「今日はこれを大和に渡そうと思って。」

「…えっ、何?」



梓はそう言って、昨晩書いた手紙を取り出して両手で大和に差し出した。



「手紙は家に帰ってから開けてね。」

「悪い。お前からのラブレターは受け取れねぇ。」



何故かこんな時こそ即答に。
まるで、私がフラれたみたいになってるし。



「は?…あんたの妄想、私より深刻だね。」

「えっ、違うの?」


「当たり前でしょ。相変わらずバカなんだから。」

「バカにバカって言われたくねーよ。」


「はいはい。私はバカですよ…。」



大和は相変わらず厄介な面もあるけど…。
呆れ眼の私から、差し出した手紙を受け取ってくれた。