プルルルル プルルルル プルルルル

カチャ…



『何だよ。俺に何か用?』



大和は3コール目で電話に出たけど、何故か怒り口調の掠れた小声に。
不自然な様子だが、用があるのでそのまま話を続けた。



「大和、もう帰っちゃった?まだ学校にいるの?」

『いま立て込んでるの!後にして。』

ブツッ… プーッ プーッ プーッ



大和はそう言って、梓の電話を一方的に切った。



「…何?あいつ……。感じ悪っ。」



電話に出てくれたまでは良かったんだけど、第一声が『何だよ』って…。
いきなり喧嘩腰?

いま何をしている最中なんだろう。

まぁ…、また後で電話をすればいっか。



梓はスマホを鞄に仕舞うと、ひとまず教室へ戻る事にした。

すっかり人気(ひとけ)のなくなった大和のクラス付近を歩いていると、たまたま向こう側から歩いてきた高梨と目が合った。

先に気付いた梓が声をかける。



「高梨先生!」

「菊池……。」



授業では週に何度も顔を合わせていたけど、別れてから二人きりで話すのは今日が初めて。

先生は私の目の前で立ち止まり、ニッコリと優しく微笑んだ。
その笑顔は、私達が交際していた当時と変わらない。