ところが……。
大和のクラスは早目に終礼を終えてしまったのか、教室には既に大和の姿は無くD組の女子の姿しか見当たらない。
急いで教室を出たんだけど、出遅れちゃったかな。
今日中に手紙を渡したかったのにな。
しかし、ブレザーのポケットに手を入れて大和に渡すはずの手紙を右手で触れた瞬間、ふとある事を思い出した。
「あ、そうだ!」
学校のルールとしてスマホは電源を切って鞄の中にしまっておかなければいけないが、大和はいつも当たり前のように、制服のポケットからスマホを取り出して、お気に入りのゲームを楽しんでいた。
多分、大和はスマホを鞄の中に入れた事は一度もない。
大和とは三年間友達だったから、私の予想は間違いない。
梓はすかさず鞄からスマホを出して手に取り、大和に電話をかけた。