蓮と二人きりという滅多にないチャンス。
緊張して声を出すのも精一杯だった。

でも、まるで絵から飛び出してきたような美しい蓮を目にしているうちに、自然とある言葉が口から飛び出していた。



「すっ…好きなんです…。柊くんが。」



自分でも予想だにしなかった、愛の告白。
勇気ある自分に正直驚いた。





彼氏いない歴15年。
告白なんて一度もした事がない。


蓮に告白するつもりで教室に入った訳じゃない。
ただ、置き忘れたお弁当箱を取りに来ただけ。
たまたま教室にいる蓮を見て、お近付きになれるチャンスと思って声をかけただけ。


それなのに…。
場の雰囲気に押されてしまった。



もー!バカバカバカーっ!
私ったら、後先考える前に告っちゃって…。

まだ五月中旬。
1年生を終えるまであと10ヶ月もあるのに、その間どうやってやり過ごせばいいのよ。
私達一度も喋った事もないし、蓮が告白を受け入れてくれる訳ないじゃん。





ところが、そんないっぱいいっぱいな私とは対照的に蓮はクスッと笑った。



「プッ…。俺のどこが好きなの?」

「顔。…顔以外よく分からない。」


「えっ…。顔?菊池は俺の顔が好きなの?それだけで告ってるの?」

「…だって、顔も柊くんの一部でしょ。」



頭が真っ白になってしまっていたせいか、私はまさかの自殺行為に走っていた。
当然、蓮は衝撃的な告白に目を丸くし言葉を失わせている。



そうだよね……。
こんなに失礼な告白を受けたら普通引くよね。

『どこが好きなの?』『顔。』って、フツーにありえないでしょ。
その上、『顔以外よく分からない。』なんて失礼にも程がある。



告白するなら、もっと時間をかけて仲良くなってからにしたかった。
何も考えないで告白するからこんな羽目になるんだ。



はぁ…。
もう、家に帰りたい。