「……勘弁してよ。」
何度も否定しているのに。
私の話を聞いてってお願いしてるのに…。
蓮はマトモに取り合ってくれない上に、自分勝手な見解で話を解決しようとしている。
受験のストレスがあるのは蓮だけじゃない…。
私も蓮と同様、明日は大学の二次試験なんだよ。
卒業まであと一週間しか残されていないプレッシャーと、なかなか復縁に応じてくれない不安。
それに加えて、我慢重ねで張り裂けそうになっていた気持ち。
それまではじっと我慢して聞いていたけど、蓮の怒鳴り声を聞いた瞬間、私の中のずっと我慢していた何かが崩壊してしまった。
「どうして目で見たものでしか判断できないの?」
「…え?」
「私は蓮じゃないから、蓮が言ってる通りの事なんて出来ない。私には私の事情があるの。自分勝手な見解を押し付けないでよ…。」
梓はそう怒鳴り散らした後、ポロっとこぼれ落ちた涙を拭う事なく蓮の元から走り去った。
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「はぁっ……っ、はぁっ…。」
大量に滴る涙を手の甲でひとぬぐいした梓は、屋上前の踊り場にぺしゃんと座り込んだ。
冷たい地面の感触が身体中に伝わる。
「私、………最低。」
すぐに後悔の念に苛まれた。
卒業間近に色んなストレスが交わり、窮地に追い込まれてしまっていた私は、クリスマスの時と同様、再び判断を誤ってしまった。
この三年間、花音との経緯を知らなかった彼に言う言葉ではなかった。
他に言い方があったはず…。
だけど、最善策が見つからなかった。