私達は閑散としている理科室前に到着すると、蓮は強く掴んでいる私の手首を離した。

蓮は教室からずっと背中を向けたまま。



花音達を教室から連れ出して話をするならまだ分かるけど…。
蓮は話にすら参加していない私を引っ張り出した。


怒りの矛先が、何故悪口を言われていた側の私に向いてるか理由がわからない。



「どうして私を連れてきたの?」



蓮の背中に向かって言った。
すると、彼は大きく息を吸って背中越しに話を始めた。



「お前は何で目の前で自分の悪口を言われてるのに言い返さないんだ。…今回は犯人が判明してるだろ?花音達の悪口がお前にも聞こえてただろ?」

「…それは、花音に言えな…かった…から。」



蓮はボソッと言った『言えなかった』という言葉に反応してしまったのか…。
ゆっくりと振り返った後、久々に合わせてきた瞳は悲しみと怒りに満ち溢れているように思えた。