「真相はわからないけど、俺にはその話が今日始まったものだとは思えない。」

「ごっ………誤解だよ、蓮…。」

「あたし達が普段から人の悪口を言う訳ないじゃん。」


「あいにく俺は勘が良くてね。自分の悪口を言われるのは全っ然構わないけど、何で梓の悪口なの?あいつがお前らに何かしたの?しかも、人前で堂々と悪口を言うその神経、どうかしてるんじゃない?」

「……。」



厳しく詰め寄る蓮にバッチリ悪口を聞かれた花音達は、気まずそうに口を塞ぐ。
いつも強気で怖いもの知らずの花音達を一瞬で黙らせてしまうほど、蓮の言葉が強烈に効いていた。



梓はシーンと静まり返る教室内で、黙って蓮と彼女達の様子を見守っていたが…。
機嫌を損ねてしまった蓮の冷たい視線は、次に梓の方へと向けられた。



「お前…。ちょっと来い。」

「…え、私?」


「いいから早く来い!」



蓮は声を荒げておかんむり状態のまま梓の手首を掴み、バタバタと足跡を立てながら教室を出て行った。







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「蓮…。どうしたの…蓮ってば。私に怒ってるの?」

「……。」



蓮は無言のまま廊下に居る人々の間を潜り抜け、ひと気の少ない理科室の方向へ向かっていた。

二年付き合っていた私にはわかる…。
背中から醸し出す彼の悲痛な叫びが。