人目を憚らずに繰り広げられていた花音の悪口は、たまたま壁1枚挟んだ先の蓮の耳に届いていた。

一方の花音達は、話に夢中で注意力が散漫していたようで、なりふり構わず悪口を話していた結果、最悪の結果を招いてしまう。


蓮が姿を現したと同時に、花音達の表情から笑顔が消えた。



「今のお前らの話って…、梓の事だろ?俺の周りがどーのこーのって…。」

「………やっだぁ。蓮、違うってば。」

「違うよ……ね、花音。」

「蓮の聞き間違いだってば。」


「ふざけんな!俺にはわかってんだよ。」



蓮の怒号が教室に響き渡った瞬間、それまで賑やかだった教室内がシーンと静まり返った。



蓮に悪口を聞かれてしまった花音達は、バツが悪そうに顔で見合わせる。

だが、時は既に遅し。
冷酷な目付きで睨みつける蓮と、一切目を合わす事が出来ない。