梓は衰弱した身体を大和に支えてもらいながら、教室の近くまで送ってもらった。
先ほどまでガタガタ震えていた足元も、大和のお陰で落ち着きを取り戻して、別れる頃には普通に歩けるくらいまで回復。
後方扉に手を添えて教室内を覗くと……。
そこには、一人きりで帰り支度をしている蓮の姿があった。
そっか…。
蓮は今日、日直当番だった。
だからさっきは教室に居なかったんだね。
どうして私は肝心な事を忘れていたんだろう。
バカだね……。
蓮は自分以外誰もいない教室から人の気配を感じ取り、後方扉の横に立っている梓に気付いた。
泣き腫らしたような赤い目に気が止まる。
「暗い顔してるけど……。何かあったの?」
「ううん…。」
相変わらず優しい蓮。
いつもと違う雰囲気だけで気にしてくれる。
蓮の優しい声が届いた瞬間、梓は安堵してしまい、膝がガクッとなって倒れそうに。
すると、蓮はすぐさま駆け寄って両腕をガッシリ掴んで身体を支えた。
「……大丈夫?」
心配する彼の声。
軽くまぶたを伏せて覗き込んでいる、いつもと変わらない優しい瞳。
そして……。
ふんわり漂う甘い香り。
もう涙は枯れきったと思っていたけど、残念ながらまだ残っていたみたい。
蓮の顔を見て安心した梓は、再びポロリと涙が溢れ落ちた。