「有り難く思えよ。もう二度と俺の胸を貸せないから。…いつになるかわかんないけど、紬専用になるかもしれないし。」

「えっ?!…今、何て。」


「今朝紬の泣いてる姿を見たら、何か守ってあげたくなったって言うか………何って言うか…。あーっ、もうわかんね…。」

「冗談じゃなくて?」


「あのさぁ…。何で俺が冗談を言わなきゃいけないの?」

「…だよね。」


「まだ気持ちとかよくわかんないから…。はっきりするまでは見守ってて欲しい。」

「あ…、うん。わかった。」



頭をぐしゃぐしゃ掻きむしりながら、照れ臭そうに紬の話をする大和は、用具室の扉の向こう側で迫力満点で仁王立ちしていた姿とは、まるで別人のよう。

結構かわいい所あるじゃん。



でも…。
助けに来てくれた時は本当に格好良かったよ。

いや、イケメントリオの一員の大和は、いつも容姿端麗で格好いいけど、救出してくれたあの瞬間が目に焼き付いちゃってなかなか離れないよ。

私も紬と上手くいくように心から願ってるからね。



「大和。一つだけお願いがあるんだけど、聞いてくれる?」

「ん、何?」


「さっきの出来事を蓮には言わないで欲しいの。」

「はぁ?お前は蓮のせいで奴らにハメられたんだろ?」


「蓮は受験期間中だし…。私の事で傷つけたくないから。お願い。」



梓は顔の前で両手を合わせてお願いをすると、大和は受験の二文字と蓮を想う梓に考えを改めさせられてしまう。



「お前がそこまで言うなら言わないけど…。」



ひょっとしたら、そこまで心配はしないかもしれないけど、受験生の私達にとって今は最も大事な時期。
自分のせいで蓮に余計な心配はかけたくなかった。



「大和…。」

「何?」


「さっきはありがとね。」



梓は気持ちを素直に伝えると、大和の温かい笑顔が戻ってきた。

救ってくれたのが大和で本当に良かった。
感謝の言葉以上に感謝している。