大和の胸の中で散々泣き腫らした後、気持ちが落ち着くと徐々に理性を取り戻していった。



「大和…。胸を貸してくれてありがとう。」



梓は右手で涙を拭い、大和の胸にそっと左手を添えて離れた。
だが、大和の瞳はまだ心配している。



「お前さぁ、何であいつらについて行ったの?」

「別のクラスの人の一人が、蓮から体育館の用具室に来るように伝えてって頼まれたと言ってて……。確認の為に教室を一度見たんだけど、蓮は教室に居なかったから、本当に人づてで私を呼んだのかと思い込んじゃって…。」


「アホか。蓮が他の(やつ)に要件を伝える訳ねぇだろ。」

「そうだよね…。今になって反省してる。でも、大和はどうして私が用具室に居る事を知ったの?」


「今朝お前とぶつかっただろ?」

「うん。」


「お前が暗い顔をして何処かへ走り去った後、後ろから紬が泣きながらお前を追いかけて来たんだ。」

「…うん。知ってる。」


「紬を引き止めて話を聞いたら、お前の心が壊れそうだから気にしてやってって。」

「紬がそんな事を…。」


「…そ。で、さっき廊下でお前を見かけて何か様子がおかしいと思って後をつけて行ったら、このザマだ。用具室の扉で聞き耳を立てていたら、ちょうど目線の先に消火栓があったから、お前を救出するならコレだと思ってね。」

「そうだったんだ。ありがと…。大和が来てくれたお陰で何もされずに済んだから。」



危機から救ってくれたのは、いま目の前にいる大和だけじゃない。
いつも傍に寄り添っていてくれている親友の紬も、自分の知らないところで助けてくれていた。


どんなに辛い目に遭っても、私はいつも一人ぼっちじゃない。
多くの人達に支えられながら、かけがえのない時間を過ごしている。