ーー体育の授業中。

花音から突き刺さる冷たい目線は、時間と共にじわじわと痛みを増していく。


でも、今日は仕方ない。
花音が私に水をかけなかったら、蓮にジャージを借りる事態まで発展しなかったのだから。

しかも、自分から貸してくれとおねだりした訳じゃないし。




だけど……。
このジャージ、蓮の香りがする。
まるで、蓮の腕の中に包まれているみたいに。

ついこの前まで間近で嗅いでいたのに。
なんか、懐かしい。






今日の授業はバスケ。
体育館のスペースを半々にして男女別々のコートで試合をしている。
まだ暫く出番が回って来ないから、コートの外側で紬と一緒に座って雑談をしていた。



最初は女子チームを応援していたけど、次第に気迫ある男子チームの方へと目が奪わた。

紺色のジャージにナンバーを付けている他の男子に対して、蓮は白い体操着の上から黄緑のナンバーをつけているから一際目立つ。



しかも、蓮はバスケ部出身。
身長は180センチ近くはあるから、何処に居ても目立つ。


蓮はプレイ中の生徒の中でもズバ抜けてバスケが上手い。
リズム良くボールを弾ませる瞬発力は、プレイヤーだけでなく、待機している女子達の目線も一斉に引き寄せる。

蓮にボールが回ると、相手プレイヤーは一瞬怖気付く。

パスにドリブルにシュートにと、多彩なプレイに自然と応援してしまっている自分がいた。



蓮は、本当に本当にカッコイイ。



並んで座っている5人先の花音に目を向けると、目からハートのビームを発している。