「大和…。うっわああぁぁん……。」



蓮に恨みを持つ男達から救出してくれた大和の顔を見た瞬間、梓は安堵により一気に涙腺が崩壊して滝のように涙を流した。



「…大丈夫か?」

「私を助けに来てくれたの?」


「当ったりめぇだろ。午前中に廊下でぶつかった時も様子がおかしかったけど……。一体何があったの?」

「やまとぉおお……。」



大和は乱れた制服のまま号泣している梓の両腕を引っ張ってマットから身体を起こし、床に落ちているリボンを手渡す。
状況を把握すると、力強く吐き出すようにため息をついた。



「お前………、マジで辛ぇな。大して仲良くしてもない男にホイホイついていくんじゃねーよ。」

「だってぇ……。グスッ…。」



梓は身体を震わせてヒクヒク咽び泣きながら、手の甲で涙を拭う。
大和はそんな梓の様子を見るなり心情を察する。



「こんなにガタガタ震えて……。よっぽど怖かったんだろうな…。犯人は特定してるから、今から非常ベルを止めに来る先生に事情を説明しよう。」

「それはダメ!」


「何で?」

「あの人達も自分の彼女にフラれて傷ついてるから…。好きな人にフラれる辛さが私にもわかるし。」


「はあぁ?お前が我慢して済む問題かよ。ケーサツ呼んでもいいくらいの刑事事件だけど?……あぁ、時間がねぇ。もうすぐでここに先生が来ちゃうから、とりあえず一旦逃げよう。」

「…うん。」



非常ベルがジリジリと体育館中に鳴り響く中…。
大和は腰が砕けている私の手を取って、その場から一緒に走り出した。



体育館の窓からの採光が、大和の明るい金髪を眩しく照らしている。

大きな背中に、力強く握りしめる手。
勇敢に立ち向かってくれた大和の姿勢に、私の心は救われた。





蓮はスーパーマンと思っていたけど…。
いま男達から身を救ってくれた大和も、私にとってはスーパーマン。



大和とは今まで散々言い合いをして、お互いの気持ちが行き違っていた時もあったけど…。

紬が大和を好きになる気持ちが理解出来た瞬間でもあった。