ガチャ…


だが、男達が油断していたのも束の間。
開いた扉の向こうには、一人の人間が殺気立たせながら腕組みをして立っている。

逆光ですぐに顔はわからなかったけど、まるで煙幕でも焚かれているかのような空気が用具室の奥にいる梓にも伝わってきた。



「ん?…誰だ?」



三人のうちの一人が手をかざしながらそう呟く。



次第に目が明かりに慣れてきた。
扉の向こうに居るのは、勿論蓮ではない。

目を凝らして見てみると……。
髪は金髪で鬼のような表情で睨み、殺気立たせながら仁王立ちしている大和の姿が。



「よぉ~~やく鍵が開いたわぁ。この俺様を長々と待たせやがって。……オメェらぁぁ、こ~んな薄暗いところで何やってんの?」



大和は巻き舌気味にそう言うと、腕を組んだまま頭を左右に振って首をポキポキと鳴らす。
挑発的な目付きを向けてキレた様子を全面的に押し出すと、男達は怯んで一歩だけ後ずさった。


校内でも腕っ節が強いと噂されている大和に、わざわざ喧嘩を挑む男などいない。
男達はお互い目でコンタクトを取り合う間もなく、逃げる事を決断する。



「ちっ…。」



男達は大和の脇を潜り抜けて行くと、足を絡ませながら体育館を走り去って行った。