ーーだが、正面の男が梓のシャツの第二ボタンに手をかけた瞬間。



ジリリリリリ……



突然、耳を塞ぎたくなるほどの大音量の非常ベルが体育館中に鳴り響いた。

すると、男達は用具室の扉の方に一斉に目を向けて動揺した様子を見せる。



「…お、何だよ。」

「体育館で火事?」

「くっそ、マジかよ…。」



身体を包み込むような非常ベルの音によって、男達の気が梓から逸れた瞬間。



ドンドン ドンドン…



「火事だー。この中にいる人達は早く外へ逃げろー!」



用具室の扉を強く叩く音と同時に、外から注意を促す声が聞こえた。
男は梓を諦めて、チッと舌打ちをしながらその場を離れようと立ち上がった。



ホッ……。
良かった。
不幸中の幸いで助かったよ…。



梓は目眩がしそうなほど安堵すると、男達は三人揃ってブツブツと文句を言いながら、用具室の扉を開けた。