「俺ら三人、昨日のバレンタインで自分の女にフラれてね。……その理由がさ、蓮に告白するから別れてくれって言うんだよね。自分の男をあっさり捨てたくなってしまうくらい、柊が魅力的なんだとよ。」

「……だから何?」


「菊池さぁ、柊の女を長く続けてたって事は、よーっぽどいい女なんだろうな…。なら、俺らにも少し分けてくれない?そうすれば、さすがのあいつだって身の程を知るだろうな。」

「蓮とはもうとっくに別れたの!腹いせに私を襲っても、蓮は何とも思わないんだから。」


「そんなの知ったこっちゃねーよ。」



唾を撒き散らすほどの勢いで怒鳴り散らした男はイラついた様子を見せて、足元の白いマットをドカっと蹴り飛ばした。
その瞬間、梓はビクッと震え上がる。



今にも逃げ出したいけど、足がガタガタ震えてしまって動けない。
まるで、蛇に睨まれた蛙のように……。



右隣まで接近してきた男は、スマートフォンを梓に向けて動画撮影を始める。
左隣の男は、梓に逃げられないようにと扉前にサッと移動。

正面の男は、人差し指で首元のネクタイを緩めながら、嫌がって後ずさりをする梓に迫り寄って来る。