もしかして蓮は最初から私を心配して……。


それなのに、私ったらエロい事ばかり妄想していた。
うわ、最悪。
自分の感情を忙しくしてたのは自分自身じゃん。

残念ながら、エロいのは蓮じゃなくて私の方かもしれない。



反省した梓は、体操着姿の蓮に申し訳なさそうに上目遣いをした。



「あ……、うん。でも、私にジャージを貸したら蓮が寒いよ。」

「俺はいいから。お前が風邪引いたらマズイだろ。」


「それに、ジャージの左胸に【柊】って名前が書いてあるし。」

「だから、何?」


「先生に蓮との仲が誤解されちゃう。」

「じゃあ、一石二鳥だな。」



蓮はニヤリと意地悪そうに微笑むと、大きな背中を向けて用具室の扉を開けた。


恥ずかしい誤解と蓮の気遣いの嬉しさの間で気持ちがかき乱された梓は、照れ臭い表情を隠す為に唇にキュッと力を入れた。





そう…、思い出した。
私は蓮の優しいところが好きだった。

さり気ない優しさ。
ちょっと強引な所。

そして、いつもドキドキさせてくれたところ。



「そういえばお前、さっきジャージを脱がせる時に軽く抵抗してただろ。……ねぇ、あの時は何考えてたの~?」

「シーっ!何でもないからっっ!」



蓮は相変わらずイジワルだ。





そんな体操着姿の蓮と、柊という名前入りのブカブカのジャージを着ている梓が、軽くふざけ合いながら体育館の端を並んで歩いていると…。


たまたま体育館に用事があった高梨は、そんな二人の姿を偶然目撃していた。