どうして私だけがこんな惨めな想いをしなくちゃいけないのかな。

私だって蓮が傍に居なくて辛いのに。
原因不明ないじめに遭っても、我慢してるのに。
一人で孤独に戦い続けているのに。

一体、どうして……。



梓はいたたまれない気持ちになると、歯を食いしばってジャージを握りしめたまま無言で教室を飛び出した。



「梓っ……。」



紬は全速力で教室の中を走り抜けていく梓の後ろから、血相を変えて追いかけていく。
引きとめようとして手を伸ばすが、梓との距離は離れていく一方。



「待って………梓っ。」



紬にはこれ以上迷惑をかけたくなかった。
だから、追いつかぬようにと振り返りもせずに走った。



三年間、ずっと迷惑かけ続けてしまったけど……。

大切な親友だから。
紬が大好きだから。
嫌な思い出は、出来るだけ記憶に残させたくないと思っていた。



いま私に起こっている残酷な出来事が、どうか紬の心に刻まれませんように…。



私は心の中で切実にそう願いながら、紬の前から姿を消した。