これで三年連続、蓮にバレンタインチョコを渡した。
でも、チョコを受け取ってもらえたからと言っても、復縁した訳じゃない。
四回目のチョコを渡す日が訪れるかどうかは、未だに不明だ。
刻一刻とと迫っている本当のお別れに、喪失感に拍車がかかる一方。
気は焦るばかりで、復縁への道筋が見つからぬまま。
「蓮、私とやり直してよ。もう90パーセント以上努力してるから。………お願い。」
「…何で?」
「いま私のチョコを受け取ってくれて食べたでしょ。」
「それなら、今日チョコを受け取った女全員と付き合わなきゃダメだな。」
「蓮…。」
復縁しようと願っても、なかなか彼に想いが届かない。
こんなに近くにいても、友達まで関係が回復しても……。
私の願いは未だに雲の上。
「…お前の悪いところ、まだ見つからないの?」
「頑張って探してるんだけど…。今のペースだと、悪いところが見つかる前に卒業しちゃう。蓮と会えなくなっちゃうよ。」
梓は蓮と会えなくなる寂しさから、目頭がじわりと熱くなった。
だが、既に限界だという事が知られたくない。
表情を隠す為に視線を下げて、涙の蛇口を止めるかのように膝下に置く手でスカートをギュッと握った。
しかし、梓の気持ちがじわじわと届いている蓮は、梓の拳の上から手をギュッと握りしめた。
「…お前ならすぐ見つかるよ。」
蓮が私の悪いところに関して一切妥協しないのは、きっと何か深い理由に繋がっている。
だから、答えは自分で探して、自分で見つけて、自分で解決する事を願っている。
蓮……。
私達、必ずやり直そうね。
蓮の言う通り、自分で必ず悪いところを見つけて、頑張って克服するから。
だから、それまで心変わりしないで待っててね。
涙がポロリと流れ落ちた梓は、蓮の大きな手を握り返した。