ハァハァと息を切らして蓮にチョコを渡すところをイメージしながら、あとひと曲がりで告白スペースという所までほぼ全力疾走で走った。
蓮はきっとここに居るに違いない…。
梓は期待を寄せながら建物の角まで行き、告白スペースの方をそっと覗き込んだ。
すると、目に映ったその光景は…。
思っていた通り蓮の姿と、多分奏と同じクラスの子であろうと思われる女子を発見。
彼女は赤面しながらも、背中に何かを隠し持っている様子。
きっと、今から蓮に渡すつもりなのだろう。
……ま、私には全部丸見えだけどね。
彼女も他の女子と同様、彼女の座を得ようとしているだろう。
チョコを盗む作戦は速攻で本人にバレてしまい、まんまと失敗に終えた。
本当は、他の女からのチョコを一つも渡したくない。
自分のチョコだけを受け取って欲しい。
だから、私はまるで幽霊のように音を立てぬまま蓮の背後に出現した。
「そのチョコは受け取らないよ。」
背後からロボットのような棒読みセリフが届くと、蓮は私の存在に気付いて身体をビクッとさせて後ろへと振り返った。