ーー私のチョコは、蓮からすると本命じゃなくて、山積みのチョコに紛れている一個に過ぎない。
アウェイの戦いはこれから始まりを迎える。





蓮の姿は朝見たっきり。
授業中以外は教室にいない。

だけど、居場所はわかっている。
今日丸一日、告白スペースから離れられない蓮は、常連者と言うよりもはや住人。

せっかく蓮の好きなブラウニー作ったのに、なかなか渡せない。





終礼を終えた瞬間、右斜め後ろの席の蓮に振り返って声をかけようとすると………。

既に蓮の姿はない。



あ…、あれ?
もう帰っちゃったの?
リュックもない。



梓は机横の鞄を持って、見失った蓮を追いかける為に後方扉の近くに座る紬に走り去り際に一声かけた。



「紬っ…。私、蓮を探してくるから。またね。」

「うん、頑張ってね!」


「紬も頑張ってね!じゃあ、行ってくる。」



笑顔で席から見送ってくれた紬も、これから大和にチョコを渡す予定のようで。

明日の報告に胸を躍らせつつ、多分蓮が居ると思われる告白スペースに走って向かった。