「お前の足元にバレンタインのチョコが落ちているのを見て、おかしいなと思ったんだよ。」
「えっ…、うそっ。」
「嘘じゃねーよ。そこに一個落ちてるから見てみろよ。」
梓は椅子を膝裏で押して、屈んで足元を確認。
すると、足元には先ほど手紙を盗み見しようと思った弾みで、一緒に落ちてしまったと思われるバレンタインチョコがひっくり返って落ちていた。
「あ…いや。…その。」
「俺の物を勝手に盗むなよ。渡した奴の気持ちになってみろ。」
「ゴメン……。蓮には他の人からのチョコを受け取って欲しくなくて…。」
「…何?他の奴にヤキモチ妬いてんの?」
「うん…。」
「そりゃ、光栄だね。」
蓮はそう言って私の頭をグシャグシャした後、床に散らばったチョコと鞄の中の残りのチョコを全て自分のリュックに詰め込んだ。
結局…。
私の願いも空しく、蓮宛てのチョコ達は最終的に本人の鞄へと静かに収まっていった。