蓮は私の真横に立つなり、少し見下ろしてこう言った。



「お前の鞄を貸せ。」

「えっ?!」


「いいからよこせ!」

「絶対ダメッ…。鞄は貸さない…。」



蓮は机の横に掛けておいた鞄を奪い上げて私が届かないように高々と持ち上げると、ファスナーを開けた。


ジ…ジ……ジジジ……


鞄がパンパンなせいで若干ファスナーの滑りは悪いが、ファスナーが半分くらい開くと、まるでポップコーン製造機の吹き出し口のように鞄からバレンタインチョコが溢れ返っていき、ドサドサと床に落下していった。

バサバサと山積みになっていくプレゼントの宛名は、全て蓮。

言い逃れが出来ない真実に、梓の表情は固まった。



「俺のチョコを奪った犯人はお前か?」

「えっ?……何の…事?」



今更シラを切り通しても無駄だが、こうする他ない。

蓮は床に散乱しているチョコの宛名を目で一つ一つ確認する。
と、同時に深いため息をついた。



終わった……。
チョコが発見された瞬間から、私は加害者になった。