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「あれ?今日はバレンタインなのに、チョコが少ないな……。」



朝、学校に登校した俺は、靴を履き替えようとして下駄箱の扉を開けた。
毎年、下駄箱には上履きが見えないくらいバレンタインチョコで敷き詰められているのに……。


1…2…3。


顔を寄せて下駄箱の中を覗き込んでざっと目で数えてみても、中に入っているバレンタインチョコはたったの3つしか見当たらない。



今年度は後夜祭のステージ上で梓に告白をしたから、チョコの数が激減したのかな?



下駄箱に居る時は、チョコが減った原因をその程度しか考えていなかった。

教室に入室してから、左斜め前の席に座っている梓に挨拶をすると…。



「梓、おはよ。」

「えっ!(ギクッ)あっ…蓮、おはよ…。」



今日の梓はいつになく背筋がピンと伸びて、ひきつり笑顔を向けてきた。
しかも、歯切れが悪く挙動不審気味に目線を左右させる。

不信感を募らせながら自分の席に座って手探りで机の中を漁ると…。



……ない!
ない!ない!ない!

最低でも一つくらいは机の中に入ってるだろうと思われるチョコが、今日は一つも入っていない。
毎年、隙間なく埋め尽くされていたあのチョコが、一つも入っていないなんて……。



まぁ別にいいやと思って、何気なく梓の方に目線を移した。



ところが……。
梓の机の右フックにかけられている鞄に異変を感じた。


梓の鞄は原型を留めていないほど歪な形をしていて、はち切れそうなほどパンパンに膨れ上がっている。
普通、学生鞄と言ったら丸みを帯びているもの。
しかし、あいつの鞄は何故か所々角ばっている。



俺は、梓の鞄が何故歪な形をしているかが、とても気になった。