自分以外の女子がどんな想いで蓮にチョコを渡すかが気になった瞬間、私の目の前に天使と悪魔が出現した。
何処から湧いてきたのかわからないけど、耳を傾けてみた。
悪魔『チョコに添えられた手紙?何て書いてあるか気になるだろ?…こっそり見ちゃいなよ。』
天使「悪魔さん!チョコを盗んだだけでも大罪なのに、それはダメよ。今以上に罪を重ねないで。」
悪魔『うっひっひっひ。手紙はこーんなに沢山あるんだから、ちょっとくらいいいだろ。一枚くらいどうって事はない。』
天使「彼にだってプライバシーはあるのよ。手紙を渡した女の子の気持ちも考えてちょうだい。」
悪魔『うるせぇ!見たもの勝ちなんだよ。いい子ぶっても損しか待ち受けてないんだよ。今までもそうだっただろ?』
天使と悪魔が葛藤を繰り返す中。
やや優勢にあった悪魔の囁きが、嫌がる私の右手に襲いかかった。
天使さん、ごめんね。
心の中で葛藤を繰り返したんだけど、悪魔さんにはどうしても勝てなかったよ。
悪魔によって呪われた右手が、ゆっくりなぞるように鞄のファスナーを15センチ程度まで開けた。
ファスナーの隙間から手を差し込み、手探りで鞄の中に詰め込んだチョコに手をかけた、次の瞬間。
扉の向こうから教室内へ入って来る蓮の姿を発見。
想像以上に早く登校した姿を見るなり、心臓が破裂しそうなほどビビった。
鞄の中に突っ込んでいた手は反射的に引っこ抜く。