「はい、20。」



外で梓の異変に気付いて昇降口へとやって来た大和は、そう言って最後の一個の画鋲をしゃがんだまま手渡した。
梓は顔を見上げる。



「大和…。」

「奏から聞いたんだけど、お前嫌がらせされてるんだって?この画鋲も嫌がらせの一部だよな。」


「プッ……。あんた達の話は本当に筒抜けなんだね。」



梓は手元の画鋲に視線を移して苦笑する。
大和はしゃがんでいる梓の隣にゆっくり腰を下ろした。



「…嫌がらせは蓮が原因だろ?俺なら犯人を探し出してボッコボコにしてやるけど。」

「私は大和とは違うから力では解決出来ないよ。」


「陰湿な嫌がらせにムカつかないの?」

「ムカつくけど、顔が見えない相手にどう対処したらいいかわからないから。」


「蓮には報告してる?」

「してないよ…。今は受験期間だし、余計な心配かけたくないから…。」



普段は勝気な梓が珍しく弱音を吐く。
大和はいつもの調子が狂うと、大きくため息をついて梓の右肩をポンッと叩いた。



「蓮に守ってもらえないのに…。人知れず我慢してるなんて辛いな…。」



そう……。
今は蓮という大きな支えがない。
どんなに辛くても一人で我慢している。


きっと、犯人は私なら反発しないと思ってナメてるのかもしれない。