教科書や参考書やノートを開いて、休み時間や自習時間をフルに使って勉強している受験モードの私達の一方で…。

既に進路先や就職先が決まっていて、卒業までの残り僅かの学校生活を楽しもうとしている生徒達の姿を、横目で見て羨ましく感じていた。



休み時間の度に席で黙々と勉強している蓮だけど、放課後を過ぎると教室からパッタリといなくなる。

帰宅したのかと思い机を確認すると、カバンは机の横のフックにかかったまま。
まだ校内に居るはずだが、どこを見渡しても本人の姿は見当たらない。






そんな日々が暫く続いた、ある日…。

街がバレンタイン一色に染まっていくのを見ているうちに、彼には年に二回訪れる毎年恒例の告白ラッシュの時期だという事を思い出した。



一度目はクリスマスで、二度目はバレンタイン。

三年生になってからのクリスマスは、蓮は私の彼氏(実際は偽彼氏だけど…)として学年中に浸透していたけど、私達が別れたという噂が流れている今回は高校生活初のシングル。

そんな独り身の蓮に狙いを定めた女子達が、列を成すかのように次々と群がり始めた。



今日も姿を消しているから、きっと居場所はあの告白スペースだろう…。

イケメンコンテスト優勝者の蓮の卒業までの残り時間が僅かとなり、いち早く彼女の座につこうと焦っている女子達は尚更気合いが入る。



この調子でいくと、今年のバレンタインは授業中以外は自分の席にいないのでは…、なんて思ったりして。

私だって復縁したいのに…。



勉強を教えてもらうという武器を片手に、日に日に友達レベルも右肩上がりになってきたけど…。
放課後に姿を見せなくなってからは、ほんの少し距離が遠退いた気がした。