卒業まで時間がないのは私だけではない。
ライバル達だって一緒。
下校時間になって、紬と一緒に帰ろうとして階段を降りていると……。
「蓮と別れたクセに、また近付いてんじゃねーよ。」
「何度も何度も付き纏って、いい加減ウザいんだよ。」
「二度も別れればもう充分だろ?しつこいんだよ。」
背中から三人組の悪口が次々と聞こえてきた。
彼女達は決して真っ向勝負はしない。
きっと、面倒な展開を避けたいのだろう。
同じく背中から悪口を聞き取った紬は横から心配そうに声をかける。
「気にしないで。あの子達は梓が羨ましいだけだから。」
「………うん、大丈夫。」
紬は、目にうっすら涙を浮かべる梓の肩を寄せた。
全てを受け入れてくれる母親のような温かみは、まるで雪崩が起きてしまったかのように強がりな建前を崩壊させていく。
慣れてる。
悪口なんて………。
一年の頃から散々繰り返されてきた嫌がらせだって、三年間ずっと我慢してきた。
だけどね。
今の私はみんなと一緒の立場なんだよ。
蓮の事で嫌がらせを受けても、今の私は蓮の後ろ盾がないんだよ。