ーー今は授業の合間の10分休み。
大和は教室の扉の向こう側から、扉付近に着席している紬に声をかけた。



「紬〜。ちょっと教科書貸して。」

「いいよー。何の教科?」


「国語ある?」

「うん、あるよ。ちょっと待ってね。」



紬は大好きな大和に頼られて、嬉しそうに口元を緩ませ、国語の教科書を机の中から探している。



最近、大和はうちのクラスに出入りする回数が増えた。
しかも、私や蓮より紬を呼ぶ事が多い気が…。

控えめな紬は、唯一大和の意見を否定しないから、大和にとっては一番話しやすい相手なのかもしれない。



ひょっとしたら、知らない所で二人の距離が縮まったとか。
ふと思い出したけど、二人はチューした仲だもんね。

遊び人の大和にとってキスは大した事ないかもしれないけど、紬にしては一大事件だったはず。



大和と二人きりで話す紬はとてもしおらしくて、初々しく笑う。
恋してるんだなぁ〜って、誰から見ても丸わかりなほど。

そんな紬を見ているうちに、私も蓮と交際を始めた頃は紬みたいに初々しかったのかな〜、なんて思ったりして。