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「ねぇ、この数式の答えがどうしても合わないの。」

「…どれ、見せてみろよ。」



クリスマス以来、口さえまともに聞いてくれなかった蓮に、帰宅困難者としてこの家に押しかけて通常会話まで繋げるという目論見は成功を成し遂げる。



ブラウンのセンターテーブルで、向かい合わせに座って勉強を始めた。


蓮は英語。
私は数学。

別々の大学を志望している私達は、お互いそれぞれ苦手な教科に力を入れていた。



一流大学を目指し数学を得意としている蓮は、まるで専属の家庭教師のよう。

私の目を見ながら、間違っている数式を事細かに説明してくれて、引っかかりやすいポイントまでもを把握していた。


わからないところを一生懸命説明しているその唇は、クリスマスの日に私とキスをした。
愛おしい唇に思わず目線が奪われる。



勉強は大事だけど、復縁も優先順位が高い。

穏やかな環境が整っている今がチャンスだと思い、話の区切りがついた所で英語の勉強に戻ろうとしていた蓮に話を切り出した。



「大和に聞いたかもしれないけど……。私、先生と別れたよ。」

「…何で?」



蓮は英単語をノートに書き綴り、顔色一つ変えずに口先だけで返事をする。



「お互いの歯車が揃わなかった。」

「ふーん…。」


「イケメントリオはみんな口が軽いから、てっきり聞いてるかと思った。」

「失礼だな…。お互い価値観は大事にする方なんでね。(よくわかってるじゃねーか…)」



蓮は梓に話があると思い、シャープペンを机に置いて話を聞く姿勢を見せた。





昨日の『まだダメだ』の【まだ】の意味が気になって仕方ない。
私がまだ先生と付き合っていると思っていた事が少し関係してるかな。

蓮の反応からして、私が先生と別れた事をやっぱり知らなかったのかも。


でも、いま別れた事を知ったから、蓮に復縁したいと伝えたら受け入れてくれるのかな。