梓は蓮の部屋に足を踏み入れた途端、一直線にタンスに向かって引き出しを開けた。

すると、先程まで背負っていたリュックを部屋に置いている蓮は、すかさず気付いた。



「何で勝手にタンスを開けてるんだ。」



蓮は冷ややかな目つきでタンスの中をあさる梓に振り返る。



「ほら、去年お揃いで買ったグレーのパーカーがあるでしょ。もうおばさんは寝てるみたいだし、パジャマを借りる事が出来ないから、パーカーをパジャマ代わりにしようかと思って。いま着てる服じゃ窮屈で寝れないよ。」

「バカ…。そんなの別れた時に捨てたから…。やめろ…、探すな。」



別れた時に捨てた?
やめろ?
探すな…?


あれ〜、おかしいな。
この前、机の引き出しを開けて見た時は、私との二年間の思い出を捨てもせずに綺麗に保管してあったのに。

しかも、そんなに早口で引き止めるなんて余計怪しい。
目ぇ泳いでるし。


もしかして、嘘をついてる可能性が。
他の思い出は捨てないで、お揃いだったパーカーだけを捨てる訳がない。



蓮は焦った様子で梓の手を止めにかかったが、タンスの中を10秒と探さぬ間にパーカーはひょっこりと顔を出した。



「ほら、すぐに見つかったよ。何でイチイチ小さなウソをつくのよ…。パーカー借りるからね。」

「……。」



勝ち誇った表情をしている梓に、嘘をついて目を合わせられない蓮。
目の色を変えて嘘をついても、真実はそこに待っていた。



素直にあるって言えばいいのに、男ってどうしてこんなに小さなプライドを守ろうとするのかしら。