「あれ、絶対わざとだよね。花音ったら本当に最低。……梓、ジャージ思いっきり濡れちゃってるけど大丈夫?」

「相変わらずだよね。花音は…。」



平静を装いながら上着に付着している水滴をパッパと手で振り払う。



どうしてこんな幼稚なイタズラをするんだろう。
蓮と付き合ってる当時ならまだしも、今はもうただの友達なのに。



「今日は風が冷たいから他のクラスの子にジャージを借りた方がいいんじゃない?このままだと風邪引いちゃうよ。」

「うん、そうだね。隣のクラスの美玲にジャージを借りてくるわ。」


「予鈴鳴っちゃったから早く行っておいで。」

「…じゃあ、行って来るね!先に体育館で待ってて。」



梓は濡れたジャージのまま、体育館と逆方向の校舎へと走り向かった。

棟の出入り口に差し掛かると、ちょうど建物から出て来たばかりで一人きりの蓮と目が合う。