「ダメだ!ダメだ!ダメだ!男はみんな狼なんだよ。自分の目でちゃんと男を見極めろよ。声をかけられてもホイホイついて行くなよ、バカ。」
蓮は鬼のような表情で、いつになく熱く怒り出した。
だが、梓の目は座ったまま淡々と答える。
「へぇ〜。蓮以上の狼って存在するんだ。知らなかったぁ。」
「お前は世の中を知らなさ過ぎる。」
「じゃあ、ある程度狼に慣れてるから大丈夫。ねぇ、早く中に入ろ。」
「…もう帰るぞ。」
「えーっ。まだ到着したばかりだよぉ。」
ブーブーと駄々をこねる梓に一歩近付いて腕を引こうとしたが、梓は負けじと腕を引っ込めて俺から逃げるように一歩後ずさった。
しかし、梓に一歩近付いた瞬間、プ〜ンと酒臭い香りが……。
気のせいだと思いたいが、念の為に鼻をヒクヒクさせて嗅ぎ直した。
「ん…、ちょっと待て。お前酒臭くない?」
「……臭う?あっ、そっかぁ。さっき、奏達と一緒に飲んだから〜。あははは……。」
「バカ!ほら、帰るぞ。前を向いてしっかり歩け。」
「えぇ~。」
今日は様子がおかしいと思っていたら、先にあいつらが酒を飲ませていたとは…。
でも、酔っ払ってる梓を心配してしまう俺は、ひょっとしたらあいつの親以上に過保護かもしれない。
蓮は足元を覚束せて嫌がる梓の腕を掴んで、家に帰そうと思い駅に向かった。