「この前さぁ、梓に『束縛されないって事は、誰からも愛されてない証拠でしょ?』って言われたよ。それを聞いたらさすがに傷付いてさ…。」
「あいつはよくわかってるじゃん。お前の事を。」
「お前もひでーな。俺には深刻な問題なのに…。」
「深刻も何も……。自分でその道を選んだんだろ?」
「うるせぇ。今までは人と付き合うのは面倒だなって思っていたけど、愛されてないって言われちゃうと、なんだか急に一人ぼっちになった気がしてさ。」
「じゃあ、彼女を作ればいいのに。」
大和は使い捨て彼女ばかり。
もって三日程度。
それ以上、同じ女の名前を聞いた事がない。
本当は人一倍人情深くて寂しがりやなのに、何故か女には飽きっぽい。
梓と交際してから割と一途な恋をしていた俺には、大和の気持ちがよく分からない。
「彼女が出来たら人生観変わる?」
「変わる変わる。だって、いま独り身で寂しいもん。」
「独り身と聞いて思い出したけど…。梓はどうするの?」
「どうするも何も……。」
「梓本人から直接聞いたんだけど、高梨と別れたらしいよ。」
俺は一瞬、我が耳を疑った。
梓に執着し過ぎるあまり、自分に都合が良く聞こえてしまっている可能性がある。
だから、もう一度聞いた。
「嘘だって言ったら怒るよ、マジで。」
「本人から聞いたって言ってんじゃん。」
「いつ聞いたの?別れた理由は?」
「んー、聞いたのは確か先週だったかな。別れた理由までは知らねーけど、俺の予想では梓がフラれたのかもな。」
「…予想で話すなよ。そこが一番肝心なのに。」
梓を諦めようと思っていた矢先、予想外の朗報が飛び込んだ。
振り返れば、最近あいつの様子がおかしかった。
俺の事をこれっぽっちも思っていないと突き放したと思えば、急にやり直したいとか言ってきて…。
俺は傷付くあまり、梓の言葉を信じられずにいたけど……。
『私は蓮が傍にいないと辛いんだよ……。』
先日の言っていたあの時の言葉は、果たしてどういう意味合いが含まれていたのだろうか。