体育の授業が終わると、蓮は脇目も振らずに梓の腕を掴んでクラスメイトの輪から外れて体育館隅へと連れて行った。



「何で美玲のジャージ着てんの?何か遭っただろ。」



蓮は不機嫌な口調でそう言うと、掴んでいる梓の腕をパッと離す。



「……気付いてたんだ。」

「自分のジャージはどうした。」


「それは、ちょっと。」

「ちょっとじゃわかんねーよ。…ってか、髪に何か黒いものがついてるけど。」



間近で聞いた蓮の声。
そして、心配そうに見つめる眼差し。

最近は私を冷たく遇らっていたのに、こんな小さな事に気付いてくれるなんて嬉しくて涙が出そう。




「私は蓮が傍にいないと辛いんだよ……。」



梓は瞳にたっぷり涙を浮かべてポロリと弱音を吐いた。



我慢していた気持ちがパンク寸前になった。
弱ってる時に心配されたら甘えたくなる。
付き合っていた時のように抱きしめてもらいたくなる。

でも、今の二人の距離感からしてそれは出来ない。





蓮は梓の髪をグシャグシャした後、返事もせずに体育館を離れて行った。

梓はそんな蓮の背中を見ながら大粒の涙を零した。





蓮は別れても変わらない。

いつも優しくて。
いつも心配してくれて。

例え身体は傍に居なくても、心は傍に居てくれる。


だから、余計忘れられない。
諦めきれない。


やっぱり蓮が好きだよ。