私達は教室に到着すると、二人で分担して泥のついた顔と髪をティッシュで簡単に拭き取り、隣のクラスの美玲にジャージの上着を借りに行った。

紬が手伝ってくれたお陰で、体育の授業はギリギリで間に合った。



こうやっていつも傍で支えてくれる紬には、本当に頭が上がらない。
お礼を何度言っても言い足りないくらい、感謝している。

親友って本当にありがたくて、かけがえのない存在。




今日の体育の授業はバレーボール。
男女別々のこの競技は、それぞれのコートで練習する。

練習を終えて出番の人と交代した私と紬は、コートの隅に二人並んで腰を下ろした。




「まだ顔に泥が付いてるね。いま拭き取ってあげる。」

「ありがとう。」



休憩中に紬が顔に残っている泥を指で拭き取ってくれていると、男子側のコートから私達の足元に向かってボールがコロコロと転がってきた。


ふと見上げると、ボールの後を追いかけて来たのは蓮。
一瞬目が合ったように見えたが、蓮の目線をよく見ると、私の胸元に書いてある美玲の苗字に気付いた様子。



以前、花音からジャージに水をかけられて蓮にジャージを借りた事があったから、また何かあった事がバレちゃったかもしれない。

蓮は口に出さなかったけど、心配そうに見つめていた瞳が印象的で、頭に焼き付いて離れなかった。