「カラオケ店でお前らが消えた後、俺ら二人だけになったからどうしようかと思ったんだけど…。話し合った結果、そのまま二人で飲みに行くって事になって…。とにかく、あの日は二人とも酔っ払っててさ。」

「…紬はともかく、あんたは酒酔いしないタイプでしょ。蓮から何もかも聞いているし。」


「…あはは、バレてた?あの日の紬の化粧は七五三みたいだったし、手作りのカップケーキなんて作ってきちゃって。…カワイイなぁと思って。」

「ちょっと!紬に手を出さないでよ!純粋で純白な紬を、あんたのドス黒い毒牙にかけないで欲しいわ。」



紬の気持ちも知らずに軽く扱っている大和にムカついて、肩にグーでパンチした。
すると、大和は殴られた部分を手で覆って不服そうな顔をする。



「いってぇ!お前、俺のこと相当嫌いなんだな。…でも、お前のダメはOKって意味なんだよな?前に蓮から聞いた事がある。」

「は?そんな訳ないでしょ。蓮の屁理屈を鵜呑みにしないで。紬に本気じゃないならキスなんてしないでよ。」


「まだわかんねーだろ。これから紬の事を好きなるかもしれないし。」

「ロクに人と付き合おうとしていないのに、どの口が言ってるんですか〜?」



梓は大和のほっぺたをギュッと強く捻ってから、足早で教室へと戻った。



教室に着くと、紬はスマホを操作しながら購買部に行った私の帰りを待っていた。
向かいの席に座ると、クリスマスの日に起きたキスの件について問いただした。



「どうして大和とキスした事を教えてくれなかったの?」

「えっ!それは……。梓が毎日泣き腫らした目で登校してたから自分の話をする余裕がなくて…。」



大和とのキスは、紬の中で一大事件だったはず。

にもかかわらず、言い出し辛い環境を作り出してしまった自分は、相変わらず自分の事しか考えていない。